チタンのウイルス不活化 抗菌力

除菌ブームにのり銅の抗菌効果が注目されています。銅は金属アレルギーには大敵ですがチタンは安全です。安全なチタンで、すでにマスクにもハイドロ銀チタンというネーミングでマスク製品にも応用されています。チタンの結婚指輪の美しい発色は酸化チタン被膜によるものですが、その酸化チタンを光触媒(紫外光に応答する酸化チタン(TiO2))という作用がもたらす、抗ウイルス、抗菌、セルフクリーニング、空気浄化、脱臭、抗かびなど、優れた機能が応用されています。チタンのウイルス不活化の記事はこちらチタン材の優れた抗菌効果

電気分解って何?

電気分解っていうのは、そのままでは自然進行しない化学変化を電気エネルギーを与えることによって進ませてやることです。
電子の移動は自発的に進行する化学変化を利用して電池の電気エネルギーを取り出したのに対し、電気分解は、外部から電圧をかけて電子を移動させるので。電気エネルギーを与えている事と同じです。

電気分解とは具体的には、化合物に電圧をかけることで、陰極で還元反応、陽極で酸化反応を起こして化合物を化学分解する方法のことです。(略して電解。)水酸化ナトリウム水溶液に電流を流すと水が陽極では酸素、陰極では水素が出る「水の電気分解」は、電気のエネルギーによって反応が進みます。
チタンの精錬は電気分解のしくみで行われます。チタンの原料は酸化物であるルチル鉱石またはイルメナイト鉱石(FeTiO3)です。酸化物を電解によって還元しチタンを取り出すには多くの電気を消費しています。

光触媒≒酸化チタン

電極の片側をTiO2酸化チタンにすると、光を あてることで水が酸素と水素に分かれます。これは水の光分解と呼ばれています。アナターゼ型酸化チタンが光のエネルギーを受けて反応を促しています。酸化チタンは、光を当てることでこの働きをするので、「光触媒」と呼ばれています。光触媒である酸化チタンには、有害物質を分解するはたらきがあります。空気中にある水分や酸素が光と反応して生じた活性酸素が有害物質を分解し、二酸化炭素や水などの無害なものに変えてくれます。汚れを分解しきれいにしたり、臭いを消したり有用性が活用されています。 チタン光触媒には細菌やウィルスを分解するはたらきもあります。

酸化窯で焼いたハートとチタンの結婚指輪

金属の電気分解の原理を知ると金属のふしぎがわかってきます

負の電荷を帯びた電子から見れば、電位は負になればなるほど、居心地が悪いようなもので、電子はより負な電位を持つ半電池式から、より正な電位を持つ半電池式に転がろうと、居心地を良くしたい電子のしくみがあり、酸化反応か還元反応の自然な向きが決まります。
例えば酸化と還元が身近に感じられるのが陶芸なのですが、やきものの窯の中では電子が奪われたり与えられたり電気分解ではない自然の化学変化が起こってすてきな釉薬が焼き物になります。ちなみに、このハートのお皿は酸化窯で私が焼いたお皿です。釉薬の原料は、主成分に長石、灰など3~10種類位の原料を混ぜて作られます。色釉の原料となる金属元素には、 コバルト(紺、藍色)、クロム(緑色、茶色、赤み)、マンガン(無色、褐色、黄土色、紫色)、ニッケル(黄色、 緑色、 茶色、グレー、赤紫系)、チタン(黄色、黄土色、クリーム)、アンチモン(白、黄、橙黄)、バナジウム等があります。チタンがメインの釉薬として使われるものの中には、長石釉薬に媒溶剤としてバリウムが添加され、チタンを大量に含有させた結晶釉薬があります。塩化ジルコニウムを加えて得るラスター釉。骨灰やジルコン、チタンの少量の添加で色合いを変えたりされる織部などの釉薬があります。チタン釉は酸化チタンから、鉄分が入ってもいい場合はルチル鉱石から採取されます。チタンは素地粘土に含まれる鉄分の影響を受けやすい原料です。 ジルコニウムは変化の少ない安定した乳濁剤で珪酸ジルコンから採取されます。
化学の分野の研究者が無理やり電気分解をして、チタンを酸化させたり還元させたりという実験の中には、装飾という指輪の世界にはありえないような強い酸化の実験がなされています。装飾と違い産業の中には、構造材として、腐食が起こることが許されないリスクとなる業種もあります。

自作のハートのやきものとチタンの結婚指輪

自発的な反応VS電圧で電子を移動させる

まず電気分解には電解質が必要です。イオンになるための電子が移動するための、自由に電子が動けるための水溶液です。指輪はどうでしょう。指と空気が指輪の環境であって、常に汗に浸った状態にはなりにくいです。酸化還元反応が指の上で起こすには電流を流さないといけないので、指輪の腐食実験はできません。化学反応はいったいどう起こるでしょうか?まれにチタンでも皮膚に感作するひとがいると勘違いしている人は、メロンの種を食べてまれにおへそからメロンが芽を出す人がいますと言うのと似ていると思うのです。指に指輪をはめた状態でチタンを電気分解するわけにはいかないからです。チタンは自発的に指輪から皮膚に反応を起すことはありません。チタンが活性金属だから皮膚でも反応しやすい、さびるとかアレルギーになる?と勘違いする方がいますが、チタンが酸化物に覆われた指輪の状態ならば不活性であり、皮膚に金属アレルギー反応を示すことはないのです。

チタンは活性金属なため、酸素と反応しやすいので精錬に膨大な電気を必要とします。アルミが電気の缶詰と言われますが、チタンはさらに膨大な電気の塊の詰め物と表現できます。活性であるのは酸素との高い親和性のためで、それによって反応し易いととらえられがちですが、それは精錬に関してなのであって、実用の指輪になったときは極めて不活性な金属です。ここが勘違いされ易い点ですが、指輪の表面を科学的に極めて安定な酸化物が覆ってしまいますので、皮膚との反応は起こらなくなっています。

チタンは膨大な電気を使って酸化物から酸素を取り除く還元が行われて造られています。チタンの元素が発見されてから、化学者の専門家たちはすぐに実用したかったはずなのに、発見から120年もかかったのは、その精錬過程の困難さがありました。
資料/・電気と技術の塊 :金属チタンの製造法/岡部徹


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